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感情と気分の違いについて🌸こころコラム🌸

こんにちは。RICメンタルクリニック三軒茶屋です😊
メンタル面の不調を感じる時、自分の事を客観的に眺める事は誰もが難しい事だと思います。沈んだ様に感じる原因不明の気持ちは感情なのか気分なのか、または別の要因なのか。そういった時に精神医学ではこのように診ていきます、というお話を本日はしていきたいと思います✨
感情と気分の違いについて――精神医学の視点から
私たちは日々の生活の中で「嬉しい」「悲しい」「なんとなく気分が沈む」といった心の動きを体験しています。こうした心理的な変化は大きく「感情(emotion)」と「気分(mood)」という二つに分類され、精神医学ではその違いを明確に区別しています。感情と気分の違いを精神医学の観点から解説し、心の不調とどのように関連しているのかについても触れていきたいと思います。
感情とは何か?
感情とは、ある特定の出来事や刺激に対して一時的に生じる主観的な反応です。例えば、怒られたときに「怒り」、褒められたときに「喜び」、危険を感じたときに「恐怖」などが生まれます。これらの反応は数秒から数分といった短時間でピークを迎え、やがて収束していきます。
感情は明確な「きっかけ」があり、身体的変化(心拍の上昇、顔の表情、筋緊張の変化など)を伴います。心理学者ポール・エクマンによると、「基本感情(喜び・怒り・悲しみ・恐怖・嫌悪・驚き)」は文化を越えて共通して存在する生得的な反応であるとされています。
精神医学において感情の異常は、「情動反応の過度な強さ」や「不適切な表出」として現れることがあります。例えば統合失調症では「感情鈍麻」、境界性パーソナリティ障害では「情動不安定」が特徴的です。
気分とは何か?
気分とは、特定のきっかけがはっきりせず、比較的長時間(数時間から数日、場合によっては数週間以上)持続する情緒的な状態です。「なんとなく憂うつ」「よくわからないけどイライラする」といった表現が典型的で、背景にある原因が自分でも明確に意識できないことが多いです。
気分は持続的であり、生活全体に広がるような影響をもたらします。感情が「今この瞬間の反応」であるのに対し、気分は「日常生活に染み込むような心理的トーン」と言えます。
精神医学では「気分障害(mood disorder)」という診断カテゴリーが存在し、代表的なものにうつ病や双極性障害があります。たとえば、うつ病では「抑うつ気分」が二週間以上続き、興味や喜びの喪失、食欲や睡眠の変化、自責感などを伴います。双極性障害では「躁状態」という過剰に高揚した気分が交互に出現します。
感情と気分の主な違い
項目 | 感情 | 気分 |
---|---|---|
発生のきっかけ | 明確(出来事・刺激) | 不明瞭または曖昧 |
持続時間 | 数秒〜数分程度 | 数時間〜数週間 |
強度 | 比較的強く、急激に変化 | 比較的穏やかで持続的 |
身体的反応 | はっきり伴う(表情、動悸など) | 明確な身体反応は少ない |
意識への上りやすさ | 自覚しやすい | 自覚しにくいこともある |
障害との関連 | 情動調整障害、パーソナリティ障害など | うつ病、双極性障害など |
感情と気分の違いを脳科学的に比較すると?
観点 | 感情 | 気分 |
---|---|---|
発生メカニズム | 扁桃体・視床下部の即時反応 | 前頭前野・海馬を含む長期的活動 |
神経伝達物質 | ドーパミン、ノルアドレナリン | セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの基礎活性 |
主な役割 | 瞬時の行動・生存のための判断 | 内的な心身状態の基調を形づくる |
脳科学の観点から見ると、感情と気分は明確に異なる神経機構に基づいています。感情は主に扁桃体や報酬系が関わる「短時間の反応」であり、気分は神経伝達物質や脳の広域ネットワークによって形成される「長時間の心の基調」です。両者の違いを理解することは、日常の心理的変化を捉える上で有用であり、精神疾患の診断や治療方針を立てるうえでも重要な基盤となります。
セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンといったこれらの物質の長期的なバランスの乱れが、うつ病や双極性障害といった気分障害につながります。たとえば、慢性的なセロトニン低下は抑うつ気分の原因となるとされ、SSRIなどの抗うつ薬はこの濃度を高めて気分の安定を促します。
臨床での意義
精神科診療においては、感情と気分の区別は非常に重要です。たとえば、「うつっぽい気分が続いていて……」という訴えが一過性の感情反応(たとえば失恋や一時的なストレス反応)なのか、それとも持続する抑うつ気分であり治療を要する状態なのかを見極める必要があります。
また、感情のコントロールが難しい人(怒りっぽい、情緒が不安定など)に対しては、感情調整のトレーニングや、薬物による情動の安定化が治療の一部になることもあります。一方、気分障害の場合は、薬物療法や認知行動療法などが主な治療選択肢となります。
まとめ
感情と気分はどちらも心の働きであり、似ているようで異なる性質を持っています。感情は瞬間的な反応であり、きっかけが明確なのに対し、気分は持続的かつ原因が曖昧な心理状態です。精神医学ではこの区別が診断や治療方針の決定に直結する重要な概念です。自身や周囲の心の動きに目を向け、「これは感情か、それとも気分の問題か」と意識することは、早期の不調の気づきや適切な支援への第一歩となるでしょう。
もしご自身で判断は難しい場合は、いつでも当院へご相談下さい✨
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