Social-contributions
社会資源との連携
精神科医療の現状と課題
~社会資源との架け橋となる医療~
日本の精神科医療の歴史的背景
日本は精神科病床数が非常に多く、全世界の精神科病床の約20%が日本に集中しており、人口1,000人当たりの病床数で世界一です。
これは他の先進国が1960年代から精神科病床を削減し、地域での治療や「脱入院化」を進める一方、日本では「隔離収容主義」が根強く残り、病床数が減らない状況にあります。
この背景には、日本独自の歴史的経緯が関係しており、1900年の精神病者監護法や1950年の精神衛生法により、公立病院の不足を補う形で私立病院が増加し、精神科病床が急激に拡大しました。特に1950年代以降の「精神科特例」による病床の設置基準緩和が、精神科病床の増加に拍車をかけました。
精神科病床の増加と入院の長期化の問題
日本の精神科病院では、病床数の多さに加えて、入院期間が長期化していることも大きな課題となっています。
精神科の平均在院日数は285日に達し、全診療科の平均29.1日と比較して非常に長いです。2019年時点では、精神科病院の入院患者の半数以上が1年以上の長期入院者で、その60%以上が65歳以上の高齢者です。入院が長期化するほど、退院後に家庭や地域に戻るケースが減り、転院や死亡が主な退院理由となる傾向が強まっています。
このような長期入院の問題は、地域社会での受け皿やサポート体制が不十分であることが要因です。早期退院を促進し、社会復帰を支援するためには、地域での支援体制の整備が不可欠です。
精神科クリニックに求められる役割
精神疾患は、誰にでも起こり得る非常に身近な問題であり、4人に1人が生涯のうちに何らかの精神疾患を経験するとされています。
2013年に精神疾患が五大疾病に追加された背景には、精神疾患の増加がありましたが、日本では依然として精神科への受診に対する不安感や偏見が強く残っています。このため、精神科クリニックには受診のハードルを下げる努力が求められています。また、精神疾患の治療には医療だけでなく、福祉サービスや行政との連携が重要であり、クリニックはこれらの橋渡し役として、患者一人ひとりのリカバリーを包括的に支援することが期待されています。
我々精神科クリニックに求められることは、こういった地域連携を促進して、精神障害者が安心して暮らしていける「地域を育てる」こと。
「地域でのリカバリー(RIC:Recovery In Community)」を実現するための社会構造の変革を、私たちのクリニックから発信していきます。